真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「この間、あなた達が美術室に来た時、私が言ったことを覚えている?」

「えっと……」
と、私はメモ帳を開く。




そこには《橋谷先生、生徒との距離おかしい》と、《生徒と不倫?》と書かれてある。



「衝撃的な内容が……」
と、開いたページをみんなに見せる。



門倉さんは頷き、
「その生徒って、誰だか特定してたりする?」
と、息吹ちゃんを見た。



「えっ!……いえ、特定はしてないです。でも……」
と、息吹ちゃんは俯き、
「……怪しいなって思っている人はいます」
と、呟いた。



「えっ、誰なの!?」
と、寧々様。



門倉さんは何も言わずに、息吹ちゃんをじっと見ている。

まるで観察しているみたいに。



「……二年三組の、市川 櫻子さんです」



前に話していた時にも、市川さんの名前が出ていたことを思い出す。

加瀬さんかも、とも言っていたけれど、滝口くんの彼女だとわかって、今は候補から外れたんだなと思った。

死に直面して、別れを迫られても。

滝口くんと別れるなんて言わなかった加瀬さんだから。



(きっと、滝口くんを裏切るような真似はしていないよね)

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