真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「だから、橋谷先生を殺したんですよね?」



市川さんがしゃがみ込んだ。

両腕で自分自身を抱きしめて。



「あんたなんかにわからない」



そう言った市川さんの目からは、涙があふれていた。



「だいたいどうやって殺したとか、わかってないでしょ?あんたなんか自分の想像に酔っているだけ。空想に付き合うほど、私は暇じゃない」

「……その空想の中では、竹中先輩の首を絞めたのは橋谷先生です」

「……」

「でも、先生にはまだ迷いがあったのかもしれない。絞めきれなかった。だから、あなたが刺した。お腹や腰に数回にわたって、何かでトドメを刺したんです」



息吹ちゃんはそう言いながら、つらそうな表情をしていた。



「それで橋谷先生と旧体育倉庫まで竹中先輩の死体を運んだ。でもその後、あなたは気づく」

「……やめて」

「あぁ、そうか。隣にいる橋谷先生だって、芸能界復帰には邪魔な存在なんだ、と」

< 177 / 195 >

この作品をシェア

pagetop