真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「だから、橋谷先生を殺したんですよね?」
市川さんがしゃがみ込んだ。
両腕で自分自身を抱きしめて。
「あんたなんかにわからない」
そう言った市川さんの目からは、涙があふれていた。
「だいたいどうやって殺したとか、わかってないでしょ?あんたなんか自分の想像に酔っているだけ。空想に付き合うほど、私は暇じゃない」
「……その空想の中では、竹中先輩の首を絞めたのは橋谷先生です」
「……」
「でも、先生にはまだ迷いがあったのかもしれない。絞めきれなかった。だから、あなたが刺した。お腹や腰に数回にわたって、何かでトドメを刺したんです」
息吹ちゃんはそう言いながら、つらそうな表情をしていた。
「それで橋谷先生と旧体育倉庫まで竹中先輩の死体を運んだ。でもその後、あなたは気づく」
「……やめて」
「あぁ、そうか。隣にいる橋谷先生だって、芸能界復帰には邪魔な存在なんだ、と」