真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「違う……」
市川さんは涙声で、否定し続ける。
「あなたは考えた。時田さんの事件から日にちも経っていない。竹中先輩が見つかることも、何日かかかるはず。……だったら、時田さんの事件に似せて橋谷先生を殺せば、みんな混乱するだろう……って」
市川さんは泣きながら首を振る。
「時田さんは落下してから死亡するまでに時間があった。橋谷先生にはその時間を与えてはいけないと考えたんですよね?だってその間に自分のことを誰かに話されたら、あなたは終わる」
「そうか」
と、私は言った。
「だから、橋谷先生には刺された後があったんだ?」
確実に殺すため。
突き落とす前に、市川さんは刺していた。
竹中先輩を刺したように。
息吹ちゃんは頷き、
「時田さんを突き落とした加瀬さんのことにあなたは当日、気づいていた。滝口くんと一緒に多目的室にいる加瀬さんを見た時から。……あなたはそれを利用しようと考えた」
と、話した。