真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「……だって」
と、市川さんが口を開いた。



「だって、加瀬って子が犯人じゃないって誤魔化せたら、私がしたことだって、すぐにはバレないと思ったから」

「!!」



市川さんは涙をポロポロ流している。



「知ってる?私の子役時代のこと。清楚で可憐な役ばっかりだった」

「……」

「そんな私が、実は学校の先生と不倫してるとか、マジで炎上もいいところ」

「……」

「竹中先輩はね、自分のものになるなら言わないって言っていた。私、耐えられなかった。あんな嫌な奴のものになるなんて、虫唾(むしず)が走る」



しゃがんでいた市川さんが立ち上がった。



「だから殺した。今まで脅してきて、私を苦しめた分だけ、あいつも苦しめばいいと思った」

「だから何度も刺したんですか?」



市川さんは涙を拭いて、無言で頷く。

そして、
「橋谷先生と竹中先輩を隠したのは、一時的なことのつもりだった」
と、続けた。

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