真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「本当のこと?」
息吹ちゃんは注意深く聞いた。
「何か、知っているんですか?その、時田さんが亡くなったことについて」
「ううん、残念ながら何もわかんないの。でも加瀬ちゃんは犯人じゃないって思う。優しい子だし、人を殺すなんて……、考えられないよ」
吉井さんは俯いた。
「私がこんなことを頼める立場じゃないって、わかってるんだけど」
「立場?」
私には何のことかわからない。
吉井さんは私を見た。
その目は潤んでいるように見えた。
「私、一年生の頃から加瀬ちゃんと友達だったの。でも、二年生になって時田さんが同じクラスになって、加瀬ちゃんが時田さんにいじめられるようになった」
「……」
私は息吹ちゃんを見た。
黙ってじっと吉井さんを見ている。
「私、その時から加瀬ちゃんのことを見捨てたの。自分に火の粉が降りかからないように、……逃げたの」