真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「一時的?」
私は思わず尋ねてしまう。
「だって、学校に死体なんて。いつ誰が見つけちゃうか、時間の問題じゃん。あの日の夜は、ひとまず旧体育倉庫に隠して、頃合いを見計らってどこかの山か、海にでも捨てるつもりだった」
「……」
「でも、橋谷先生が怖気付いた」
「えっ?」
と、私は自分の目が丸くなったのがわかった。
「『殺人なんてするつもりはなかった』とか、『これ以上罪を重ねる前に、警察に全てを話す』とか言い出した」
「……」
市川さんの眉根が寄る。
「わかる?こんなことになるなんて。……私、ずっと真夜中を歩いている気分だった」
「真夜中?」
と、息吹ちゃん。
「暗くて、居心地の悪い、ずっしりと重い気分。子役を辞めてから、ずっと。私には私の居場所なんて無かったよ」
私達は黙った。
市川さんは続ける。
「でも、先生が私を真夜中の果てまで追い込んだ。芸能人にスキャンダルなんて致命的なの。警察に話す?私はどうなるの?」
「……」