真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「加瀬さんがどうしていじめられているのか、私にはわからない。でも二年になってすぐ、時田さんがいじめ始めた」
「……」
「吉井さんは加瀬さんの力になりたいって言ってた。偉いと思う。例えそれが遅い、遅すぎた行動だとしても」
「うん」
息吹ちゃんは俯く。
「私も加瀬さんの力になりたい。ずっと見て見ぬフリしてきたことを、謝りたい」
「息吹ちゃん……」
私は思い出していた。
小学三年生の時。
息吹ちゃんはいじめられていた。
きっかけは球技大会。
あと少しでクラスが優勝するってところで、息吹ちゃんがミスを犯し、優勝を逃した。
息吹ちゃんはその日を境に、クラス全員から無視され始めて、物を隠されたり、陰口を言われるようになった。
「あの日々は、地獄だった」
と、息吹ちゃん。
「でも私には彩葉ちゃんがいた。クラスから出れば、違うクラスの彩葉ちゃんが廊下で笑って待ってくれている」
「そんなの、当たり前じゃん」
「ううん」