真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「やめろよ、そういうこと言うの」
ひとりの男子が口を開いた。
ひっそりと学校生活を送っている私でも、彼のことは知っている。
(滝口 司くんだ)
端正な顔立ち。
成績だって良い。
運動神経は抜群。
おまけに友達も多い。
滝口くんは第二高校の、いわば王子様的存在で、どこまでもイケてる有名人だった。
(さすが王子様。この状況を放っておかないんだ)
こっそり感心してしまう。
だけど、
「あんた黙っててくんない?関係ないし」
と、増岡さんの冷たくて鋭い刃のような声。
「黙ってられない。時田さんが亡くなったことと、加瀬さんは無関係じゃん」
「なんでそう言い切れるの?絶対こいつじゃん。千世にいじめられてたんだもん」
「……時田さんだけじゃないじゃん」
「は?」
私は息吹ちゃんを盗み見た。
息吹ちゃんはじっと黙って、ふたりのやり取りを見守っていた。