真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

「やめろよ、そういうこと言うの」



ひとりの男子が口を開いた。

ひっそりと学校生活を送っている私でも、彼のことは知っている。



滝口 司(たきぐち つかさ)くんだ)



端正な顔立ち。

成績だって良い。

運動神経は抜群。

おまけに友達も多い。



滝口くんは第二高校の、いわば王子様的存在で、どこまでもイケてる有名人だった。



(さすが王子様。この状況を放っておかないんだ)

こっそり感心してしまう。



だけど、
「あんた黙っててくんない?関係ないし」
と、増岡さんの冷たくて鋭い刃のような声。



「黙ってられない。時田さんが亡くなったことと、加瀬さんは無関係じゃん」

「なんでそう言い切れるの?絶対こいつじゃん。千世にいじめられてたんだもん」

「……時田さんだけじゃないじゃん」

「は?」



私は息吹ちゃんを盗み見た。

息吹ちゃんはじっと黙って、ふたりのやり取りを見守っていた。

< 7 / 195 >

この作品をシェア

pagetop