真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
『藤沢、学校は楽しいか?』
突然の質問に。
私は驚いてしまって。
うまく答えることができなかった。
黙ったままの私に、先生はこう言った。
『どれだけ後になってもいいから、いつか、藤沢が学校での楽しかった出来事のことを、先生に教えてくれな』
橋谷先生は、そう言って職員室に帰って行った。
私は廊下で、ぼんやりと思った。
(橋谷先生って、私のことを認識してたんだ)
いつも派手な感じの子のことしか考えてないと思っていた。
私なんて、先生の心の中に存在していない。
気にかけてもらえることなんて、ない。
……そう思っていた。
(ほんの少しでも、私のこと、心配してくれてたんだな)
あの日、そう思って。
なんとなく気持ちが軽くなった。
それまで行きたくなかった教室にも。
少しだけ、楽な気持ちで入れるようになった。
……橋谷先生。
なんで、亡くなったの。
私、まだ。
先生に話してないのに。