真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

『藤沢、学校は楽しいか?』



突然の質問に。

私は驚いてしまって。

うまく答えることができなかった。



黙ったままの私に、先生はこう言った。



『どれだけ後になってもいいから、いつか、藤沢が学校での楽しかった出来事のことを、先生に教えてくれな』



橋谷先生は、そう言って職員室に帰って行った。



私は廊下で、ぼんやりと思った。



(橋谷先生って、私のことを認識してたんだ)



いつも派手な感じの子のことしか考えてないと思っていた。

私なんて、先生の心の中に存在していない。

気にかけてもらえることなんて、ない。

……そう思っていた。



(ほんの少しでも、私のこと、心配してくれてたんだな)



あの日、そう思って。

なんとなく気持ちが軽くなった。



それまで行きたくなかった教室にも。

少しだけ、楽な気持ちで入れるようになった。








……橋谷先生。

なんで、亡くなったの。

私、まだ。

先生に話してないのに。

< 84 / 195 >

この作品をシェア

pagetop