【短】みやまの花嫁


「やっべ、もう始まってる! 弥世、急ごうぜ!」


「うん……」




永悟に急かされて立ち上がると、かき氷の器と細長い筒を屑籠に捨てて、石畳の奥へと早歩きで向かった。

拝殿の前には舞台が設置されていて、沢山の人の視線を集める中央に、白い着物と緋色の袴を着たお姉さんの姿がある。

舞台の端に控えた、年老いた女の人の神楽笛が鳴り始めると、お姉さんが手に持った鈴をしゃん、と鳴らして緩やかに動いた。




「あれ、いつもとちがう“まい”だ」


「お姉さん……」


「え、あのみこさんが弥世の姉ちゃんなの?」


「うん……いつも、お世話してくれる人」




舞台の上をすり足で移動して、白い袖を靡かせながら手を上げ、しゃん、と鈴を鳴らす。

くるりと反転すれば、背中に向かって真っすぐ垂れた黒い髪が、白い着物の真ん中で艶々と輝いた。
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