【短】みやまの花嫁
「……そんな、不思議なものがあるの?」




尋ねると、永悟は驚いたような顔で固まる。

神楽笛の音と鈴の音が、沈黙を埋めるように鳴っていた。




「弥世って、どうやってくらしてきたんだ? 電話も知らないとか、おかしいぞ……」


「……お家の中で、お姉さんにお世話をしてもらって。外に出たのは、今日が初めてだから……ごめんなさい」


「えっ? 1回も外に出たことないのか?」


「うん……外に出ちゃだめって、ずっと言われてたから」




全部、お姉さんがお世話してくれた。

全部、お姉さんが教えてくれた。

だから、外に出る必要もなかった。


窓の外の世界に、憧れはあったけれど……だめなことだから。

いつの間にか、窓の外を見ることも、やめてしまった。
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