【短】みやまの花嫁
別れ
ずんずん歩くお姉さんに、拝殿の中まで連れていかれる。
暗い部屋の中で、お姉さんは手を離した。
「弥世。俗世に生きる人の言葉に耳を貸してはだめよ」
「……はい」
「あなたは神様の花嫁になる、特別な子なの。分かっているわね」
「……わたしは、悪い子だから神様のおよめさんになるの?」
問いかければ、前から衣擦れの音がする。
「何を聞いたのかしら……違うわ。悪い子だったら神様の花嫁に相応しくないでしょう?」
「うん……」
「弥世は神様と幸せに暮らすのよ。明日、いよいよ神様に嫁入りするの。弥世も楽しみでしょう?」
「……うん」
右手に持った、ラムネの瓶をきゅっと握った。
どうして、こんなに胸がもやもやするんだろう。
苦しく、感じるんだろう。
「お姉さん……わたし、電話がほしい」