【短】みやまの花嫁
「! ……だめよ。いいえ、弥世には必要ないものだわ」


「でも……」


「言ったでしょう。本殿には弥世の身一つで入るのだと。神様の花嫁になる時、俗世のものを持ち込んではいけないのよ」


「……!」




それじゃあ、ラムネの瓶も、スーパーボールも……?




「お祭りを楽しむのはいいことよ。でも、外の物を持つのは明日の嫁入り前まで。それまでにお別れを済ませておきなさい」


「……」




わたしはラムネの瓶を強く握って、左手で透明な巾着袋を押さえた。

この宝物を持っていられるのは、明日まで。

“思い出”を持っていられるのは、明日まで……。




「この後の舞が終わるまで、ここで待っていなさい」


「はい……」




真っ暗な部屋にわたしを残して、お姉さんは拝殿の外へと出ていった。



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