【短】みやまの花嫁
ぐっと拳を握って叫べば、兄ちゃんは「分かった分かった」と適当なことを言う。
母ちゃんも兄ちゃんも、人の言うこと全く聞いてねーんだから!
マジで弥世が大変だっていうのに!
「お前はその弥世って子が好きなんだな?」
「!」
好奇心むき出しのこの目は、間違いなく友達としてじゃなくて、恋愛の意味で聞いてる。
「そんなこと今関係ないだろ! しんけんに聞いてくれよ!」
「永悟が素直に答えたら、俺も真剣に聞いてやる。何せ可愛い弟の春だからな」
「今は夏だぞ、何言ってんだ……」
まぁ、兄ちゃんの頭がおかしいのは今に始まったことじゃない。
しょうがないから、おれは兄ちゃんを睨んで、言ってやった。
「好きじゃない!」
「えぇ、本当かー? その子を見て胸がドキドキしたり、ずっと笑わせてあげたいって思ったりしなかったのか?」