【短】みやまの花嫁


「いーや、悪くない! 兄ちゃんは嬉しいぞ~。さぁて、恋敵は神様なんだってな?」


「こいがたきじゃねーよ! あいつ、姉ちゃんにおしつけられてるんだ! 神様のおよめさんにならないとだめだって!」


「ふむふむ、そうは言ってもなぁ……」


「しんけんに聞くって言ったじゃんか! おれの言うことが信じられないのか!?」




ジロッと兄ちゃんを睨むと、兄ちゃんも腕を組んで俺を見た。




「そうだな、お前はこんな嘘を吐くやつじゃない。お嫁さんになるのは明日だったな。それじゃあ明日、弥世ちゃんを奪い去ってやれ」


「うばい去る……?」


「今日は巫女さんに連れていかれたんだろう? だとしたらチャンスは明日、お嫁さんになる前だ」


「なんでだよ! すぐにでも行かないと!」


「今日は柿の木のじいさんにも目をつけられたし、何より子供が遅くに出歩いてたら目立つ。今はぐっと堪えて、明日、隙を狙うんだ」
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