【短】みやまの花嫁
“明日”になっちゃった。
永悟はもう、いなくなっちゃったのかな。
昨日とは違う、柄のない今様色の着物。
袖の袂に入れてきた、ラムネの瓶とスーパーボール。
永悟との思い出は、これだけ。
でも、これを持っていられるのも、夜まで。
「お別れ、しないといけないんだ……」
つぅ、と何かが頬を伝う感触がして、くすぐったいと思う。
左手の甲で拭ってみれば、それは水滴だった。
「雨……?」
呟いて、空を見上げると、木の葉に覆われた中から、青い空がちらりと見える。
雨が降る時、空は灰色になるはず。
雨じゃないとしたら、これは……。
「……」
わたしは立ち上がって、歩き出した。
山の中を、探検するように。
そうしたら、少しは……。