【短】みやまの花嫁
「待ちなさい!」




永悟の手を引っ張って、神社の外れに逃げ込む。

後ろから追いかけてくるお姉さんをちらりと見ては、探検で覚えた迷路のような細道を進んだ。


木や、茂みが密集した場所。

太い木の根が柵のように立ちはだかる場所。




「永悟、だいじょうぶ……っ?」


「よ、っと! これくらいよゆー!」


「弥世、待ちなさい! あなたがいなくなったらどうなると思っているの! この町の平和は……! くっ……」




お姉さんの声が遠ざかっていく。

着物の裾が捲れ上がるのも気にせず、わたしは永悟と走り続けた。




「人を捧げて守ってきたのよ! あなたが犠牲になることで、他のみんなが平和に暮らせるのに!」


「……っ」
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