婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

「王命で辺境伯と婚姻を結ぶということは……もうトマス様とは破談になったのよね……?」

 わたしとトマス・マークス王太子殿下は、よくある政略結婚だ。
 でも、貴族の家門に生まれたからには仕方のないことだと思った。わたしは将来の国母になるために、子供の頃から必死で努力をしたつもりよ。

 でも……わたしには向いていなかった。
 才能がない、というのが正解かしら。

 本当は人見知りが激しくて、人と話すのが苦手で。引っ込み思案で、声も小さかったし、あがり症で、人前に立つとよく頭が真っ白になって……。
 こんな人間が王宮の中心である王妃なんて務まるわけがなかった。

 わたしの交流関係の構築の下手さにトマス様も辟易していたのか、いつの間にか彼との定期のお茶会の頻度もどんどん減っていった。

 そんな時、トマス様はリリアン・キャロット伯爵令嬢と出会ったのだ。
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