婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
彼女は既に社交界の華だった。
波打つピンクブロンドの髪は目を引いて、生き生きとしたつぶらな瞳、華奢な身体は庇護欲が掻き立てられるようで、常に殿方たちから囲まれていた。
人懐っこくて、会話上手で、あの眩しいくらいの明るい笑顔は、太陽みたいに周囲まで明るく照らしていた。彼女の側にいると、みんな自然と笑顔に溢れていた。
頭の回転も早くて、他者を思いやり、時には計算ずくな言動は、陰謀渦巻く王宮で十分に戦っていける能力だった。
そんな彼女とトマス様が恋に落ちるのに時間はかからなかった。
分別のある彼女は彼との仲を必死で隠しているようだったけど、恋に浮ついた心は自然と漏れているみたいで、わたしもすぐに気付いた。
二人が木陰でキスをしている姿も、何度も目撃した。
……惨めだった。
彼女は、自分が欲しいものを全て持っている。
王宮内も、彼女を中心とした新たな派閥が出来上がっていっていた。彼女を王太子妃にと持ち上げる勢力が出てくるのも時間の問題だろう。
――そんな風に考えている頃、神殿で彼から婚約破棄を告げられたのだ。