婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜



 その時、雷に打たれたかのように、ふと閃いた。

 わたしはこれから、知らない土地で知らない人たちに囲まれて暮らすことになる。彼らは王都での公爵令嬢のことを何も知らないのだ。

 これは、チャンスなんじゃないかしら?

 一からの人間関係の構築。一からマーガレットという人間の存在を示す機会。
 そう、どんなしがらみからも縛られない……新しいマーガレットとして、独り立ちするチャンス!

 天啓のように考えが浮かんだら、背中に羽がはえて今にも籠から飛び立せそうな気分になった。

 辺境伯とは仮面夫婦になって、一人で生きていこう。
 きっと彼も、長い期間この地に住んでいて、愛する女性が存在するはず。わたしは彼らの邪魔をしないように、ひっそりと一人で暮らすのよ。

 もう、人と人の隙間に挟まれて、神経を擦り減らすこともない。苦手な社交もしたくない。
 ここでは、今までの自分を知っている人物はいないのだから、なりたい自分として振る舞っていいのよ。

 突然未来が明るくなって、目の前に花輪の道が出来ていく。


「わたしは……ここで自立をするわ!!」


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