婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

 わたしの叫び声が食堂中に響き渡った。
 執事やメイドたちが、気まずそうに顔を見合わせている。不安定な沈黙が居心地を悪くした。

「おいおい、病み上がりの身で大声で叫んだらぶり返しちゃうぞ!」

 ……空気の読めない辺境伯が空気の読めない発言をする。イライラが急上昇した。
 わたしは矢庭に気色ばんで、

「だ、誰のせいで叫ばざるを得ないのですかっ!!」

 思いっ切り怒りをぶつけたが、

「もう元気みたいだな。じゃあ朝食にしようぜ、マギー。あー腹減った~~~」

 彼はどこ吹く風でフォークを手に取ったのだった。

「もうっ、マギーって呼ばないで!」

「俺のことはデニーちゃんって呼んでくれ、マギー」

「朝食をいただきましょう……デニス・アレッド・辺境伯・閣下!」

 その後は終始無言を貫いた。辺境伯は隣でべらべらと喋っていたけど、断固無視よ。
 それでも彼は、一人で話し続けて、一人で盛り上がっていた。何がそんなに楽しいのかしら?


 賑やかなのか静かなのか分からない朝食会が終わると、

「マギー、元気になったことだし、今日は俺が領地を案内するよ」

「…………そうね」

 わたしは好奇心に負けて、彼に付いて行くことにしたのだった。



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