婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
わたしは辺境伯の隣の、会場の中心の席に座っていた。
名目上は今日の主役なだけあって、わたしの元には代わる代わる辺境の人々が挨拶にやって来ていた。それを笑顔で受け答える。
社交は、苦手だ。
どんなに頑張っても、人と接するのが苦痛を伴うことは、決して払拭できなかった。
でも、自分は将来の王妃になるのだからと、我慢して我慢して、やり抜いた。
自分に比べて、キャロット伯爵令嬢はいつも社交の中心にいて……正直、恨めしかった。
「マギー、今日は疲れただろう? もう喋らずに適当に笑うだけでいいよ。あいつらの相手は俺が代わりにやるから」
「えっ……?」
わたしは目を丸くする。不意を突かれて驚きを隠せなかった。
そんなことを言われたのは初めてだったのだ。だって、社交は貴族の義務でしょう?
辺境伯はふっと笑ってから、にわに立ち上がった――と、思ったら、
「ウェ~イ! お前たち、盛り上がっているかぁ~~~っ!!」
「「「「「ウェ~~~イっ!!」」」」」
元気よくジャンプをしてテーブルを乗り越え、乱れまくるどんちゃん騒ぎの中へ飛び込んで行った。
その後は、ウェイウェイ言いながら踊っているのか喧嘩をしているのか分からないくらいにもみくちゃになって、ワインの瓶に直接口をつけながら一気飲みをして、ワハワハと豪快に笑っていた。
彼の周りには自然と辺境の人たちが集まっていって、渦のような熱気に包まれていた。