婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「…………」
わたしは、その混沌とした様子を、ぽつねんと一人で遠巻きに眺めていた。
本当に、彼は子供みたいにはしゃぐのね。たしか彼は、年は自分より7歳年上だったはず。
「なんて落ち着きのない24歳なのかしら……」
呆れて声も出ないくらいだけど、ちょっと楽しかった。
そして、ちょっと嬉しい。
彼は、わたしが社交が苦手なことに気付いていたのだと思う。そして、ああやって道化役を…………いえ、あれが彼の「素」なのかしら?
……それでも、わたしは一人で生きていくと決めたのだ。
だから、辺境伯には最初から伝えておかなければならない。彼の真に愛する人のためにも。
夢みたいな宴が終わって夜の静寂を取り戻した時、わたしは意を決して、彼に打ち明けた。
「わたしは……あなたを愛することはないわ」と。