婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

◆ ◆ ◆




「おはよう、マギー」

「おはようございます、辺境伯様」

 翌朝、わたしは何事もなかったかのように食卓に着く。なるべく昨晩のことは考えないように、彼の顔を見ないように…………。

「なんですの?」

 わたしが部屋に到着するなり、ずーっと目線で追いかけてくる彼に根負けをして、視線を合わせた。

「いやぁ、昨日は領地視察に歓迎会に疲れただろう? 今日はゆっくり休んでくれ。なんなら、中庭に――」

「わたしには、やるべきことがありますので」

「やるべきこと?」

「そうです」

 昨晩は彼のペースに巻き込まれて、言うべきことを最後まで言えなかった。
 仮面夫婦になるために、わたしがこれから行うことを先に宣言しておかなきゃね。

 まず、大きく息を吸ってから、

「わたしは……自立するのよっ!!」

 大音声で言い放つ。

 したり顔。

 そして沈黙。

 辺境伯は目を丸くして、ぽかんと口を開けたまま間抜け面でこちらを眺めていた。
 勝ったわ。昨日は彼の勢いに呑み込まれてしまったけど、今日はわたしが彼を掌握するのよ。


「…………で、具体的には?」

 しばらくして、辺境伯が尋ねる。彼の瞳はキラキラと輝いて、心なしか、わくわくしているようだった。

 よくぞ聞いてくれました! 昨日の視察で、自分の考えが固まったの。
 わたしの自立への第一歩。

 それは――……、


「小屋を作るわ」


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