婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
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「おはよう、マギー」
「おはようございます、辺境伯様」
翌朝、わたしは何事もなかったかのように食卓に着く。なるべく昨晩のことは考えないように、彼の顔を見ないように…………。
「なんですの?」
わたしが部屋に到着するなり、ずーっと目線で追いかけてくる彼に根負けをして、視線を合わせた。
「いやぁ、昨日は領地視察に歓迎会に疲れただろう? 今日はゆっくり休んでくれ。なんなら、中庭に――」
「わたしには、やるべきことがありますので」
「やるべきこと?」
「そうです」
昨晩は彼のペースに巻き込まれて、言うべきことを最後まで言えなかった。
仮面夫婦になるために、わたしがこれから行うことを先に宣言しておかなきゃね。
まず、大きく息を吸ってから、
「わたしは……自立するのよっ!!」
大音声で言い放つ。
したり顔。
そして沈黙。
辺境伯は目を丸くして、ぽかんと口を開けたまま間抜け面でこちらを眺めていた。
勝ったわ。昨日は彼の勢いに呑み込まれてしまったけど、今日はわたしが彼を掌握するのよ。
「…………で、具体的には?」
しばらくして、辺境伯が尋ねる。彼の瞳はキラキラと輝いて、心なしか、わくわくしているようだった。
よくぞ聞いてくれました! 昨日の視察で、自分の考えが固まったの。
わたしの自立への第一歩。
それは――……、
「小屋を作るわ」