婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

 ようやく騙されていたことに気付いて、顔が真っ赤になる。
 さっきのは演技だったのね! わたしに斧を与えるために、わざとらしく病気を装ったんだわ。

 彼はにこりと笑って、

「馬鹿にしていないよ。俺は君に救われた。そのお礼に斧を渡す。等価交換みたいなものだ」

「そんなの……自立とは言えないわ」

「仮に、さっき君が言っていたように斧を作るために鉄を探すのが自立だとしたら、君が今着ている服も脱ぎ捨てて、野生の蚕を捕まえて育てるところから始めないといけないんだぜ? そんなこと出来るのか?」

「それは……」

 わたしは口ごもる。答えはもちろん――不可能だ。

 蚕から糸を採取するまで時間がかかるし、布にするための機織りも作らなければならない。それまで一糸まとわないなんて無理な話よね。
 そもそも、野生の蚕を触るなんて……無理!
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