婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜


 マーガレットが領地へやって来てからというもの、デニスは毎日が楽しくてしかたなかった。

 彼女と話していると時がたつのも忘れ去り、延々と一緒に居られてしまう。
 ちょっとずれているが、一生懸命なところや少し頑固なところが好ましく思った。

 公爵令嬢を迎えるにあたって、王宮からは特に説明はなかった。おそらく大声で言えない事情があったのだろう。

 王都でデニスと出会った頃には、既に王太子の婚約者だったマーガレット。その長い歴史に終止符を打つとなると、王都で大きな事件があったのは火を見るより明らかだ。

 彼女は王家から体よく処分された。
 どうせ、あの評判の悪い王太子が何か問題を起こしたのだろう。そのうえ自分のことを棚に上げて、理不尽に彼女を責めたに違いない。何か卑怯な手を使って彼女を貶めたのだ。

 婚約破棄は、彼女にとって酷く辛いものだったのだろう。あの奇妙な言動は、そこから来ているはずだ。

 ならば、自分のできることは、彼女の傷を癒やすことだ。
 辺境でやりたいことを全部やらせて、王都の悲しい記憶を忘却の彼方へ吹っ飛ばして欲しい。

 そして……マーガレットの片えくぼ。
 あの日、王宮で見たチャーミングな笑顔をもう一度見たいと切に思った。彼女は、まだえくぼを見せてくれない。

「絶対に俺がマギーを笑わせてやる……!」


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