婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「マギー、無事か? 怪我はない?」
「あ、ありがとう……怪我はないけど…………気持ち悪い」
「びっくりしただろう? あれはスペクタルカメレオンと言って、ただひたすら舐めるだけの魔物だよ。人間を傷付けるようなことはないけど、何が楽しいのかとにかく舐めてくるんだ。――って言うか、王都周辺には出ないんだっけ?」
「あ、あんな変なの生まれて初めて見たわよ!」
「そうか。そりゃ災難だったな。ま、国を守る身としては、王都が平和でなりよりだ」と、辺境伯は苦笑いをした。
「はぁ……。辺境って不思議なところだわ。わたし……本当にここで自立できるのかしら……」
「おいおい、何を弱気になっているんだよ? いつもの威勢はどうした!?」
「だって……木だって全然切れてないし……」
「もう10本も切っているじゃないか」
「あなたなら10本なんて一日も掛からずに終わらせるでしょう?」
「身体能力には個人差があるのだから仕方ない。少しずつだけど、前進しているよ。頑張ってるじゃん」
「そうかしら……」