婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
◆ ◆ ◆
「げ……えんがちょ……」
ブレイク子爵令息が、顔を引きつらせながらわたしたちを迎え入れる。彼は心底嫌そうにこちらを見ていた。
「こら! ブレイク!」
「だって、デニス様。その女、汚ねぇじゃん」
「悪かったわね」
屋敷に着くなり、わたしはメイドたちに預けられて綺麗にしてもらったのだった。
あんなにべちょべちょに汚れていたのに、文句も言わずにお世話をしてくれて頭が下がるわ。……ブレイク子爵令息以外は。
急遽、用意してくれたお風呂は薔薇の花びらが浮かんで香りが良くて、粘液の不快感や肉体の疲労さえも吹き飛んだわ。
最近、慣れない力仕事で疲れが溜まっているみたいで、久しぶりのゆったりとした時間だった。
湯船の温度が、辺境伯から抱き上げられた時の温かさに似ていて、不覚にも彼の顔が頭から離れなかった。
なんだか、辺境に来てから驚くことばかりだわ。
辺境伯とはもっとドライな関係になるだろうと思っていたけど、想定外に深く関わるようになって、すっかり調子が狂っている気がする。一人で自立するって決めたのに、彼はうるさいくらいに構ってきて。
……でも、それが嬉しい…………かもしれなくて。
「――駄目駄目。しっかりしなきゃ!」
強く頭を振る。いくら彼がお人好しだからって、このまま甘えてちゃ駄目よね。
当面の自分の目標は、小屋を作ること。
明日から、また頑張らなくちゃ!
「げ……えんがちょ……」
ブレイク子爵令息が、顔を引きつらせながらわたしたちを迎え入れる。彼は心底嫌そうにこちらを見ていた。
「こら! ブレイク!」
「だって、デニス様。その女、汚ねぇじゃん」
「悪かったわね」
屋敷に着くなり、わたしはメイドたちに預けられて綺麗にしてもらったのだった。
あんなにべちょべちょに汚れていたのに、文句も言わずにお世話をしてくれて頭が下がるわ。……ブレイク子爵令息以外は。
急遽、用意してくれたお風呂は薔薇の花びらが浮かんで香りが良くて、粘液の不快感や肉体の疲労さえも吹き飛んだわ。
最近、慣れない力仕事で疲れが溜まっているみたいで、久しぶりのゆったりとした時間だった。
湯船の温度が、辺境伯から抱き上げられた時の温かさに似ていて、不覚にも彼の顔が頭から離れなかった。
なんだか、辺境に来てから驚くことばかりだわ。
辺境伯とはもっとドライな関係になるだろうと思っていたけど、想定外に深く関わるようになって、すっかり調子が狂っている気がする。一人で自立するって決めたのに、彼はうるさいくらいに構ってきて。
……でも、それが嬉しい…………かもしれなくて。
「――駄目駄目。しっかりしなきゃ!」
強く頭を振る。いくら彼がお人好しだからって、このまま甘えてちゃ駄目よね。
当面の自分の目標は、小屋を作ること。
明日から、また頑張らなくちゃ!