婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「っつっっ……」
みるみる顔が真っ赤になる。
な、なにをやっているのよ、わたしったら。真面目な話をしなきゃいけない時に、なにを呑気にぐぅぐぅ言っているの!?
羞恥心で固まっていると、
「あーーーっ! 腹減った! 飯にしようぜっ!!」
辺境伯は持ってきた袋をごそごそと漁り始めて、
「ウェ~イ! デリバリーデニーちゃんで~すっ!」
数個の大きなバスケットを取り出した。
「……なに、これ」
「まぁまぁ。開けてみろよ」と、彼は一つのバスケットに手を伸ばす。わたしは一番小さなバスケットの蓋をそっと開けた。
「うわぁっ……!」
バスケットの中には、美味しそうな食べ物がいっぱい詰まっていた。
「マギーと一緒に食べようと思って作ったんだ」
「凄い……! 一人でこんなに作ってくれたの?」
「い、いや……。少しは乳母から手伝って貰ったけど……。少し、な」と、彼は気まずそうに顔を逸らした。その言い逃れをする子供のような様相がおかしくて、くすりと笑う。
「そうなのね。嬉しいわ。ありがとう」
ほとんど乳母が作ったとしても、彼の行為が純粋に嬉しかった。
わたしがここに来る時には彼は既に居たから、きっとうんと早起きした作ってくれたのね。