婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「凄いじゃないか、マギー!」
「きゃあっ!」
出し抜けにデニス様がわたしに飛び付いて来て、ぎゅっと抱き締めながら頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
「助けてくれてありがとう! ――そう言えば、君の家門は炎魔法で有名だったな。とんでもない威力だな、こりゃ」
「……ま、この国で炎魔法なんて無意味だけどね」
鏡を信仰するこの国では、同等と見做される水魔法は神聖視されていたが、逆に鏡を破壊する炎魔法は不吉とされていた。
「そんなことはない! 誇れるような凄い魔法だ!」と、彼は満面の笑みを見せる。
「そうかしら……」
「そうだよ! 君がこの地を守ったんだ! 素晴らしいことだ」
「そ、う……?」
デニス様から手放しで褒められて、こそばゆい気分になる。王妃教育では叱られることばかりで、褒められるなんてなかったから。……役に立てて、良かった。