婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜


◆ ◆ ◆




「本日のMVP・マギーちゃんにかんぱぁ~いっ!」

「「「「「乾杯っ!!」」」」」

 ガシャリ――と、グラスの鳴る音が一斉に響いた。
 お祭り騒ぎが大好きな辺境の人々は「強敵を倒した記念パーティー」を領主のお屋敷で行っていたのだ。

 そう、わたしも住んでいるデニス様のお屋敷だ。
 大広間に豪勢な料理やお酒を並べて、戦い終えた兵士たちやその家族、関わった人々……入りきれないくらいのたくさんの領民たちが集まっていた。


「マギー、今日は君が主役だから楽しんでくれ」

 わたしもデニス様と乾杯をする。

「ありがとう。でも、主役は戦いに関わった皆だわ。全員が祝福されるべきよ」

「ははっ、それもそうだな。……その、こういうの苦手だったら部屋で休んでいいから。疲れただろう?」

「いいえ」わたしは首を横に振る。「わたしが……社交をしたいの。その……領地の皆さんと仲良くなりたいと思っているの。…………わたしは、辺境伯の妻ですから」

 彼は一拍ほど黙り込み、目を見開いたかと思ったら、すぐにふっと目を細めた。

「そうか」そして、私の頭をぽんと撫でる。「よろしくな、奥さん」

「っ……!」

 またもや顔が上気する。今日で何度目かしら。彼に触れられると恥ずかしくて、でも嬉しくて、もぞもぞするような複雑な気分だった。
 だけど……嫌な気はしないのはなぜかしら。
< 57 / 95 >

この作品をシェア

pagetop