婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜



「公爵令嬢、飲んでいますか?」

 掛け声に顔を上げて周囲を見渡すと、そこには兵士たちがぐるりとわたしたちを囲んでいてた。皆一様に瞳を輝かせて、こちらを見ている。

「凄いじゃないか、公爵令嬢! ――いや、辺境伯夫人?」

「見直したぜ! 王都の人間もやるじゃん!」

「もしかして、辺境伯様より強いんじゃないか!?」

 わっと、わたしに近寄ってめいめいに讃賞の言葉をくれた。
 多くの人から表立って褒められるのは生まれて初めての経験で、急に恥ずかしくなって思わず顔を伏せる。予想外の突然の称賛に戸惑ってしまった。

「わ……わたしは、何も……」と、小声で答えるのが精一杯だった。

「こらこら、お前たち! マギーがびっくりしているだろう? 彼女と話したい時は俺を通すように!」と、デニス様が助け舟を出してくれる。

「そんなこと言って、デニス様、公爵令嬢を独り占めするつもりでしょう?」

「そうだ、そうだ! 全く、独占欲が強いんだから」

「まぁ、こんな素敵な方なら辺境伯様が渡したくないのも無理ないですねぇ~」

 どっと笑い声が起きる。恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちがないまぜになって、くすぐったい気分になった。
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