婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「それにしても、今日の敵は手強かったなぁ」とブレイク子爵令息。
「今日はあちらから来たからな」
「本当に公爵令嬢のお陰ですよ」
「あちら……から?」
わたしは目を丸くする。彼らの言葉に違和感を抱いたのだ。
「あれ? マギーは知らないのか? ほら、鏡を通じて相手と交信ができるだろう?」
「えぇ、それは知っているわ」
鏡は、人や物を繋ぐ媒体としても利用される。魔力を操作して、鏡の向こうにいる人物と会話をしたり、向こうの様子を見たりすることが出来るのだ。
デニス様は頷いてから、
「高度な魔力を駆使すれば、鏡の向こう側へ行くことが可能だ。魔物も、そうなんだよ」
「えっ……!」
そんなの、初耳だった。ただでさえ、鏡を利用して移動するのには莫大な魔力量が必要なのに、人間より知能の低い魔物がそんな技を使えるなんて……。
「王都では知られてないのか?」とブレイク子爵令息。「奴らは主に水を使って来るんだよ。魔の瘴気を利用しているようだ。それも突然に現れるから大変なんだ」
「それは……知らなかったわ」