婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

1 辺境送り

◆ ◆ ◆



「もうすぐ、ローヴァー公爵令嬢を乗せた馬車が到着するようです」

「そうか……」

 側近の言葉に、デニス・アレッド辺境伯は渋い顔で頷いた。
 王宮からの無茶な命令に嘆息する。


 これから領地へ来る予定の、マーガレット・ローヴァー公爵令嬢。
 デニスは5年前に一度だけ彼女と会ったことがあった。

 馬車を待ちながら、令嬢の姿をぼんやりと思い出す。
 あれは、彼が珍しく王宮の夜会へ参加した時のことだ。

 たまたま仕事で王都へ滞在していて、せっかくだからと国王から舞踏会に誘われたのだった。
 快諾したものの、複雑に入り組んだ王宮に慣れない彼は、たちまち道に迷ってしまった。

「どうなさったのですか?」
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