婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

 平和な王都では、魔物の存在なんて文献や話でしか知らないから。王都へは幾重もの防波堤を突破しなければ魔物は侵入することは出来ない。

 ……わたしたち王都の住人は、辺境や他の領地の犠牲の上に成り立っていたのね。

「それが、厄介なことに、あちら側から来た魔物は強さが倍以上になるんだ。しかも気性が荒くて、討伐も大変なんだよ」と、子爵令息は肩をすくめる。

「まぁ、放っておいたらこちら側の瘴気にやられて死ぬのだが……それまで激しく暴れてな。腹を空かせてるみたいで凶暴になるんだよ」とデニス様。

「そうそう。あれが来ると、いっつも大変なんだぜ」と子爵令息。

「そうなのね。王都の人間は、あなたたちに何度命を救われたのかしら……! いくらお礼を述べても足りないわ。本当にありがとう」

 わたしは深く頭を下げた。こんな安っぽいお礼なんて、彼らには失礼かもしれない。でも、感謝の気持ちを伝えたかったのだ。

 自分も、もう辺境の人間だ。だから彼らとともに戦いたいと思った。
 それが、デニス様の言う「自立」なのだと思うから。


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