婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「なぁ、マギー」
その時、出し抜けに彼がわたしの手を握って来た。
「どっ……どうしたの?」
握られた手が異様に熱かった。でも、離したくないと思った。
「俺たちの別荘が完成したらさ――」
「えっ?」
わたしは目を見張る。今、何て……?
彼は、いつもみたいに子供っぽく笑う。
「だからさ、俺たちの別荘、だろ? これが完成したら、屋敷からの道も整備しないとな。馬車で通えるくらいのでっかい道にしよう」
はっとして彼の目を見る。その瞳は、優しくこちらを見つめていた。
「それにさ、でかい道が完成したら、その周辺も綺麗に整えないといけないな。店もたくさん並ぶような大通りにしよう。――あっ、そうだ。母上の母国と繋ぐ道を作ったら、交易も捗るんじゃないか?」