婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「デニス様……わたし…………」
嬉しくて、じわりと涙が滲んだ。温かさを帯びた喜びが、胸いっぱいに広がっていく。
彼は、わたしの気持ちを汲み取ってくれていたのだ。今日だけじゃなく、いつもそう。思えば、出会ってからずっとわたしの心に寄り添ってくれていたわ。
「ほらほら、領主の妻が泣いてどうするんだ。まだやることがいっぱいあるぞ? 俺たちがしっかりしなきゃ!」
「そう、ね……」
わたしは涙を拭った。そして、彼の顔をまっすぐに見る。
「小屋の完成を皮切りに、もっと領地を発展させましょう! 王都に負けないくらいに!」
「あぁ! 国一番……いや、大陸一の領地にしよう!」
「もうっ、大袈裟なんだから」
「いいや、俺は本気だ――あっ、そうだそうだ! 面白いことを考えたんだ!」と、彼はポンと手を叩いた。
「面白いこと?」
わたしは目を丸くする。
「あぁ、小屋の完成の前祝いさ」
デニス様はニタリと弧を描いて笑った。
この顔は、何かを企んでいるわね。