婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
困惑顔で立ち往生していたところに現れたのが、マーガレットだった。
初めて彼女の姿を見たときの驚きは、今でも鮮明に覚えていた。
プラチナブロンドの煌めく髪に、宝石のような碧い瞳。美しく整っているが少々負けん気の強そうな顔立ちは、彼の好奇心をくすぐった。
「いや……ちょっと道に迷ってしまって、な」
「もしかして、夜会の会場を探していますの? でしたら、わたしもこれから向かうつもりですので、ご一緒しましょう?」
二人は、会場に着くまで会話を楽しんだ。
マーガレットは気高そうな見た目に反して、辺境の田舎から出てきたデニスに対しても気さくに話してくれた。
話題の広さと当意即妙な受け答えは、さすが高い教育を受けた中央貴族の令嬢といったところだろうか。
少しの時間だったが、それは彼にとって心に残る思い出となったのだった。
そして、一番印象的だったのは、彼女が笑った時に現れる片えくぼ。
くしゃりと大きく笑ったときに浮かび上がるえくぼは、ちょっと大人びた澄まし顔の彼女が年相応の子供の姿に戻ったみたいで、とても可愛らしかった。
「マーガレット・ローヴァー公爵令嬢か……」
デニスは自然と頬が緩んだ。