婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
11 ささやかな仕返し
「前祝い……?」と、わたしは目をぱちくりさせる。
「あぁ! すっげぇ面白いことを思いついた! マギーを虚仮にした仕返しに、王太子の部屋に大量に魔物を送ってやろうぜ!!」
彼の提案した「前祝い」とは、王太子殿下にいたずらをしてやろう――と、いう酷く子供じみたものだった。
水魔法は鏡の代用としても利用できる。
水面に「映す」ことが出来るからだ。
以前ドラゴンが水を伝って現れたように、水魔法使いは水を鏡のように自在に操れるのだ。
もっとも、とてつもなく魔力を必要とするので、並大抵の魔法使いでは不可能なのだけれど。
「それは面白そ――」言いかけて、わたしは首を横に振る。「駄目だわ」
「なんで?」と、彼は微かに眉を曇らせた。
「トマ――王太子殿下に嫌がらせをするのは大賛成だけど、そんなことをしたら辺境の立場が……あなたの権威が傷付くかもしれないわ。王都を守れなかった、って」
「なんだぁ~、そんなことか!」今度は彼の顔がパッと明るくなる。「目的を達成したらすぐに引っ込めるから大丈夫だよ。バレないって。それに、魔物はだな……」
彼は再びわたしの耳元で、
「ごにょごにょごにょ……」
とっても悪い顔をした。
「それなら……良いでしょう」
釣られて、わたしもふっと顔を歪めた。