婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
――わらわらわらわらっ!!
鏡の中から、七色に輝く大きなカメレオンの群れがどっと湧いてきた。
それらは、二人が叫び声を上げる前にベタベタベタッと、むき出しになっている肉体に張り付いていく。
「ひぃぃぃぃっ!!」
「な、なんだっ、これはっ!?」
二人とも大声で叫んだつもりが、スペクタルカメレオンたちの壁に阻まれて、掻き消された。
そしてカメレオンの群れは、粘着性のある唾液を垂れ流しながら、ベロベロと愛し合う者たちを舐め始める。
「ぎゃあぁぁぁぁぁっつ!!」
「イヤあぁぁぁぁぁっつ!!」
ひんやりとした長い舌は、絡み付くように舐め回した。べちょべちょと豪華な絨毯に濡れた染みが広がる。
余ったカメレオンは、王太子の寝室をとにかく舐めてぐしゃぐしゃにした。
同時に、デニスが送った別部隊が、隣の部屋で伯爵令嬢のドレスや私物を舐めて遊んでいた。
「殿下っ! どうされました――ひえぇぇぇっ!!」
いち早く異変に気付いた近衛兵は、あまりの惨状に悲鳴を上げる。
部屋じゅうに跋扈する七色のカメレオン、そしてべちゃべちゃ。彼は驚きのあまり、しばらくのあいだ唖然としてその光景を眺めていた。