婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
◆ ◆ ◆
わたしとデニス様は、鏡を通してスペクタルカメレオンが向こうへ行ってからの一連の様子を眺めていた。
王太子と伯爵令嬢の慌てふためく姿、べちゃべちゃの部屋、そして聖女の力を発せないことに訝しがる近衛兵の様子を、この目でしっかりと見たのだ。
「ぎゃははははっ!! おい、見たか? アイツらの間抜け顔!」
デニス様は、隣でゲラゲラと腹を抱えていた。
わたしも、笑ってはいけないと思いつつも、自然と顔が緩む。これで少しは溜飲が下がったわ。
そう言えば、自分は元より王太子のことなんて特に好きではなかった。
なのに、なんであんなに婚約者の座に固執していたのだろう。……ま、きっと貴族として義務を果たすのに必死だったのね。今となっては、もうどうでもいいことよ。