婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

13 帰りたくない

「…………帰ろうか。元の世界に」


 唐突に発したデニス様の言葉に、わたしの頭は真っ白になった。
 たちまち重い空気が停滞して、下へ引っ張られるように身体が硬直する。

「どういう、ことですの……?」

 しばらくして、やっと掠れた声で彼に尋ねる。
 彼は酷く傷付いたような顔をして、少し俯きながらぽつぽつと話し始めた。

「その……辺境に現れる魔物には大きく分けて二種類あると、前にも話したな? 元々ここに棲息している魔物と……あちら側から来た魔物だ」

 歯切れの悪い彼の話しぶりに、不安の波が押し寄せて来る。ぬるりとした寒気が、背中からみるみる全身に伝わった。

「あちら側から魔物が来る際は、魔の瘴気の濃度が異様に高まって、何らかの影響を及ぼすことが原因だ。それらは予告もなく、突発的に現れる」

「そう、ね……。ここに来たばかりの時、領地の勉強の授業で教わったわ」

 鼓動が早くなって、ガンガンと頭にまで響いた。
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