婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜
「そんな……そんなっ…………!」
総毛立った。ぶるりと身体が打ち震えて、止めるように両腕を抱いた。
それでも、震えは止まらない。全身の血がみるみる凍り付くように、肉体の感覚がなくなっていく。
にわかに、その事実は受け入れ難かった。
彼が間違えているんじゃないかって、鏡に笑顔を向けようと思っても、僅かさえも口角が上がらない。
その間も、彼は冷酷な事実を淡々と告げる。
「あちら側から来た魔物は、放っておいてもいずれはこちらの魔の瘴気に毒されて死に至る。だが、奴らはここの世界の瘴気が合わないのか、腹を空かせたみたいに暴れまくる。だから基本的には自然死の前に倒す」
「わ、わたしも……」
くらりと目眩がした。
思い当たる節は沢山あった。
辺境に来てから、すぐに疲れること、すぐにお腹が空くこと、日に日に体調が悪くなっていること……。
それらは、わたしもあちら側から来たことの何よりの証左だった。