婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

◆ ◆ ◆




「いようっ、公爵令嬢! 俺のこと覚えてるぅ~? ――つーか、その全身包帯ぐる巻きはどうしたっ!?」

「あなたはっ……!?」

 到着するなり、目を剥いた。
 従者に支えられて馬車を降りると、そこには……デニス・アレッド辺境伯が、満面の笑みでわたしを待ち受けていたのだ。

 懐かしい姿をみとめて、少しだけ心が落ち着いた。
 辺境伯は魔物との戦いで磨き抜かれた美丈夫で、ひときわ上背が高くて、鮮やかな赤い髪が印象的な方だった。

 わたしは彼に一度だけお会いしたことがある。
 精悍な見た目とは反して、剽軽で……ちょっと騒がしいのよね。でも、そこが楽しくって。

 はっと我に返る。
 目の前に彼がいるということは……、

「ここは……辺境っ!?」
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