夜這いを命じられたら、国王陛下に愛されました
新王セウリス・ガキア 7
12.
シドゥータ王国は今でこそ中央の地で覇権を成しているが、元は南方出身の流民であった。故に色素が濃く、はっきりとした原色の色彩を持つものが多い
例えば、セウリス。セウリスは燃えるような赤々とした真っ直ぐな赤髪に深い海のような青い瞳だ
例えば、セウリスの側近であるクレト・オズヴァルド。彼は夜のような黒髪に黒茶の瞳をしている
例えば、もう一人の側近、オリヴェロ・ゼペレ。彼は少し濁った緑髪にオレンジがかった赤い瞳をしている
このように濁っているだとか、他の色と混ざっているだとかいう多少の違いはあるが王国の民は皆、はっきりとした色を持つ
多いとは言うが、周辺の国も似たような色彩で茶髪が多い、緑眼が多い、青眼が多いと言った多少の違いはあれど、これといって王国だけが特別な訳じゃない。‥‥‥‥東の国、羽中周辺国を除いて
そんなことを考えて、セウリスはハッと我に返る。こんなことを考えている場合ではない。速やかに刺客を捕らえなければ。これはイケるのでは?と油断しているのかは知らないが、まだ気配は感じる。‥‥それに、大丈夫なのかと確認のためのノックも鳴った。多分、オリヴェロだろう。あいつは堪え性が無いから…と、取っ手を引く
「(コクコク)」
「‥‥‥はぁ」
案の定、オリヴェロだった。オリヴェロは殺っていい?殺っていい?と犬のようにキラキラと目を輝かせて、早く早くと頷いている。仕方なく、指で気配の場所を教え、頷き返す
「!」
「殺すなよ」
釘をさしておくのは忘れない
「ちょっ、オリヴェロ令息!」
「‥諦めろ、エイベル」
オリヴェロは指の動きと頷きにすぐさま、反応し部屋の中に入る。「殺すなよ」という釘は完全に無視された。エイベルは完全に置いてけぼりだった
「お‥‥らぁっ!」
「!‥‥‥ッ!」
オリヴェロは一人、扉から近い影に潜んでいた刺客を一閃。カンカンッと数度のやり取りを交わし、先手を取ったアドバンテージを生かし、早々に倒れた刺客を踏みつけた
「‥‥‥ははっ、隠れてないで出て来いよ。俺と遊ぼう‥‥‥‥よっ!」
剣を一振り。血糊を掃い、次に狙いを定め、駆けて上段から斬りかかる。エイベルは慌てて瞬殺で足蹴にされた刺客を拘束しに行く
「くそッ‥‥!気付かれてたのか‥‥!」
「当たり前ー」
クローゼットに隠れていた刺客と細かい剣戟を交わし、オリヴェロがおす。分が悪いと悟った刺客が距離を取ろうと後退するが、その倍のスピードでオリヴェロが迫る。セウリスは羨ましそうな目でオリヴェロを見ている
「チッ、‥‥なるべく使いたくなかったが‥‥‥」
「あン?使わせる気、ないけど?」
「ガッ‥‥‥!」
重い打撃音がした。オリヴェロが強烈な腹パンをくらわしたのだ
「エイベルー、これも任せた」
「ちょッ、‥‥人手‥‥‥」
あまりにも素早い制圧にエイベルは目を回す
自分はこっちを抑えているというのに、んな無茶なと言いたげだ。それはそう
セウリスは自分がやろうかと足を一歩進めたが、その時、ガチャと扉が開かれた音がした。オリヴェロの剣戟の音に気付き、騎士たちが入ってきたのだ。これなら自分が行かない方が良さそうだなと残念さを隠そうともしない顔で息をつく。たった今意識を奪われた刺客はしばらく目覚めなさそうだし、大丈夫だろう
ガキンッ
「――陛下!」
背後の気配にセウリスは素早く振り向き、手近の物で剣を防ぐ。お互いの舌打ちの音が響いた。セウリスは剣を持っていなかったことに対する不覚。刺客は絶好のチャンスを逃したことに対する苛つきだった
シドゥータ王国は今でこそ中央の地で覇権を成しているが、元は南方出身の流民であった。故に色素が濃く、はっきりとした原色の色彩を持つものが多い
例えば、セウリス。セウリスは燃えるような赤々とした真っ直ぐな赤髪に深い海のような青い瞳だ
例えば、セウリスの側近であるクレト・オズヴァルド。彼は夜のような黒髪に黒茶の瞳をしている
例えば、もう一人の側近、オリヴェロ・ゼペレ。彼は少し濁った緑髪にオレンジがかった赤い瞳をしている
このように濁っているだとか、他の色と混ざっているだとかいう多少の違いはあるが王国の民は皆、はっきりとした色を持つ
多いとは言うが、周辺の国も似たような色彩で茶髪が多い、緑眼が多い、青眼が多いと言った多少の違いはあれど、これといって王国だけが特別な訳じゃない。‥‥‥‥東の国、羽中周辺国を除いて
そんなことを考えて、セウリスはハッと我に返る。こんなことを考えている場合ではない。速やかに刺客を捕らえなければ。これはイケるのでは?と油断しているのかは知らないが、まだ気配は感じる。‥‥それに、大丈夫なのかと確認のためのノックも鳴った。多分、オリヴェロだろう。あいつは堪え性が無いから…と、取っ手を引く
「(コクコク)」
「‥‥‥はぁ」
案の定、オリヴェロだった。オリヴェロは殺っていい?殺っていい?と犬のようにキラキラと目を輝かせて、早く早くと頷いている。仕方なく、指で気配の場所を教え、頷き返す
「!」
「殺すなよ」
釘をさしておくのは忘れない
「ちょっ、オリヴェロ令息!」
「‥諦めろ、エイベル」
オリヴェロは指の動きと頷きにすぐさま、反応し部屋の中に入る。「殺すなよ」という釘は完全に無視された。エイベルは完全に置いてけぼりだった
「お‥‥らぁっ!」
「!‥‥‥ッ!」
オリヴェロは一人、扉から近い影に潜んでいた刺客を一閃。カンカンッと数度のやり取りを交わし、先手を取ったアドバンテージを生かし、早々に倒れた刺客を踏みつけた
「‥‥‥ははっ、隠れてないで出て来いよ。俺と遊ぼう‥‥‥‥よっ!」
剣を一振り。血糊を掃い、次に狙いを定め、駆けて上段から斬りかかる。エイベルは慌てて瞬殺で足蹴にされた刺客を拘束しに行く
「くそッ‥‥!気付かれてたのか‥‥!」
「当たり前ー」
クローゼットに隠れていた刺客と細かい剣戟を交わし、オリヴェロがおす。分が悪いと悟った刺客が距離を取ろうと後退するが、その倍のスピードでオリヴェロが迫る。セウリスは羨ましそうな目でオリヴェロを見ている
「チッ、‥‥なるべく使いたくなかったが‥‥‥」
「あン?使わせる気、ないけど?」
「ガッ‥‥‥!」
重い打撃音がした。オリヴェロが強烈な腹パンをくらわしたのだ
「エイベルー、これも任せた」
「ちょッ、‥‥人手‥‥‥」
あまりにも素早い制圧にエイベルは目を回す
自分はこっちを抑えているというのに、んな無茶なと言いたげだ。それはそう
セウリスは自分がやろうかと足を一歩進めたが、その時、ガチャと扉が開かれた音がした。オリヴェロの剣戟の音に気付き、騎士たちが入ってきたのだ。これなら自分が行かない方が良さそうだなと残念さを隠そうともしない顔で息をつく。たった今意識を奪われた刺客はしばらく目覚めなさそうだし、大丈夫だろう
ガキンッ
「――陛下!」
背後の気配にセウリスは素早く振り向き、手近の物で剣を防ぐ。お互いの舌打ちの音が響いた。セウリスは剣を持っていなかったことに対する不覚。刺客は絶好のチャンスを逃したことに対する苛つきだった