夜這いを命じられたら、国王陛下に愛されました
新王セウリス・ガキア 1
6.
シドゥータ王国はマジート大陸の中心に位置する王国である
中心とはいっても、西側は左下から斜めに大きく削れ、右に僅かに傾いた逆三角形のような歪な形になっているため、海が近く、北側に位置する帝国とは王国の北側からしか行き来が出来ない。だが、海が近く地質的にも肥沃な大地であるため、マジート中央大陸の中では帝国と一、二を争うほど、豊かで恵まれている国であり、「大陸の中央国」や「黄金の国シドゥータ」などとも呼ばれている
だが、豊かで四方八方を様々な国々に囲まれているため、昔から他国に狙われやすく滅びの危機に瀕することやく五回。北は帝国。東は羽中周辺国。南は商業連盟。大まかな勢力図表すとこの三つに分けられるが、今まで攻めてこなかった勢力は無く、それ故王国の人間は己の大切なものを狙うモノに大変好戦的だと有名だ
また、多数の戦の経験により、少しずつではあるが王国の領地は拡大。徐々に右斜め上を取り込んでゆき、三つの勢力を完全に分断する形になる。ここまでくると王国のうまみを搾り取ってやろうという周辺国の考えは減って行き、逆にその周辺国の民が移民として王国に流れ込むことになる。大半の国はここで財政が不安定となってしまうのだが、基本的に懐に取り込んだものには甘い王国民の人柄だ。 東の周辺国、北の帝国、南の商業連盟、沢山の国の文化や特色を取り込み、更に発展していくこととなった。わかりやすい形で言えば、建築物は湿気が多い国ゆえに風通しが良い古来の中華風や南国風をなぞらえたものに代わって行き、服装は王国の貴族階級特有のドレス以外に沢山の選択肢が出来た。沢山の刺繍を施された豪奢な上衣下裳、襦裙や動きやすいひざ丈のワンピースドレス(南国の衣装は流石に露出が過ぎるとあまり流行らなかった)
さて、そんな経済的にも文化的にも豊かな大国である王国だが、政治という術を身に着けた後でも他国から狙われるということが無くなるわけでもなかった。東の国から先代の代に友好の証として皇女が王国の貴族に嫁いできたが、その後の音沙汰は無し――とりあえず、目先の危険はないと判断されている。南国は完全にこちらのおこぼれ、もしくはがっつり商いのやり取りをしているので友好国に落ち着いた。残すは戦争大好き北の帝国だけである
(目の上のたん瘤である帝国に頭が痛ければ、自国の貴族のごたごたで胃が痛いとはこのことか)
順風満帆に見える黄金の国シドゥータ。そんな王国にはある慣例がある
『シドゥータ王の民、成するまで姿見するべからず』
シドゥータ王の民とは王国の王族のこと。「成するまで」とは成人するまで、という意味である
ここまで説明すれば勘のいい方ならばあっ‥‥と憐れみの色を浮かべた者も居るかもしれない
シドゥータの民は己の懐に入れた者には優しく、それ以外のものには厳しい。四方八方を国に囲まれている。少しでも気を抜けば(戦争&王族毒殺の)物理的に王国の死活問題
と、様々な要因が絡みつき、シドゥータ王の代替わりの際は必ず、密かに荒れるのである
わかりやすく言えば、今までずっと表舞台に姿を現さなかったポッと出の王族が即位。大して情報が無く、暗君か賢君かもわからぬまま、長く緊張が続いている、新たな王の即位という事で気が緩んでいると睨んだ北の帝国に注意を払いピリピリする文官軍人&重役。新人である王にあれこれ教えながら様々な問題を処理。しかも此度の新王は成人どころか24の男で、聞けば身分を隠し今まで他国を遊び歩いてきた男らしい。なんと、放蕩男か‥‥と知らぬ間に評価が大暴落。その計りの視線を受けながら、対応を見られる執務の時間。そして段々と平和ボケしてきた王国内の貴族たちのいさかいの多さ
一言で言えば、初っ端から問題が山積み。むしろ、新王が即位することで自主的に次々と問題が積みあがっていく、否積み上げられていくと言うべきか
「ああ゛あ゛ーーッ!!」
新王セウリス・ガキア・シドゥータ(24)は重厚な文机にバンッッと勢いよく頭を打ち付けた
その突然の奇行に新たなる王をようやく受け入れ始めてきた文官や重役たちがびくうッと身を強張らせるが、幼いころからの世話役であり、他国を回る旅にも同行した生っ粋の側近たちは慣れた様にやれやれと肩をすくめるだけ
正しくシドゥータの現在はカオスである
シドゥータ王国はマジート大陸の中心に位置する王国である
中心とはいっても、西側は左下から斜めに大きく削れ、右に僅かに傾いた逆三角形のような歪な形になっているため、海が近く、北側に位置する帝国とは王国の北側からしか行き来が出来ない。だが、海が近く地質的にも肥沃な大地であるため、マジート中央大陸の中では帝国と一、二を争うほど、豊かで恵まれている国であり、「大陸の中央国」や「黄金の国シドゥータ」などとも呼ばれている
だが、豊かで四方八方を様々な国々に囲まれているため、昔から他国に狙われやすく滅びの危機に瀕することやく五回。北は帝国。東は羽中周辺国。南は商業連盟。大まかな勢力図表すとこの三つに分けられるが、今まで攻めてこなかった勢力は無く、それ故王国の人間は己の大切なものを狙うモノに大変好戦的だと有名だ
また、多数の戦の経験により、少しずつではあるが王国の領地は拡大。徐々に右斜め上を取り込んでゆき、三つの勢力を完全に分断する形になる。ここまでくると王国のうまみを搾り取ってやろうという周辺国の考えは減って行き、逆にその周辺国の民が移民として王国に流れ込むことになる。大半の国はここで財政が不安定となってしまうのだが、基本的に懐に取り込んだものには甘い王国民の人柄だ。 東の周辺国、北の帝国、南の商業連盟、沢山の国の文化や特色を取り込み、更に発展していくこととなった。わかりやすい形で言えば、建築物は湿気が多い国ゆえに風通しが良い古来の中華風や南国風をなぞらえたものに代わって行き、服装は王国の貴族階級特有のドレス以外に沢山の選択肢が出来た。沢山の刺繍を施された豪奢な上衣下裳、襦裙や動きやすいひざ丈のワンピースドレス(南国の衣装は流石に露出が過ぎるとあまり流行らなかった)
さて、そんな経済的にも文化的にも豊かな大国である王国だが、政治という術を身に着けた後でも他国から狙われるということが無くなるわけでもなかった。東の国から先代の代に友好の証として皇女が王国の貴族に嫁いできたが、その後の音沙汰は無し――とりあえず、目先の危険はないと判断されている。南国は完全にこちらのおこぼれ、もしくはがっつり商いのやり取りをしているので友好国に落ち着いた。残すは戦争大好き北の帝国だけである
(目の上のたん瘤である帝国に頭が痛ければ、自国の貴族のごたごたで胃が痛いとはこのことか)
順風満帆に見える黄金の国シドゥータ。そんな王国にはある慣例がある
『シドゥータ王の民、成するまで姿見するべからず』
シドゥータ王の民とは王国の王族のこと。「成するまで」とは成人するまで、という意味である
ここまで説明すれば勘のいい方ならばあっ‥‥と憐れみの色を浮かべた者も居るかもしれない
シドゥータの民は己の懐に入れた者には優しく、それ以外のものには厳しい。四方八方を国に囲まれている。少しでも気を抜けば(戦争&王族毒殺の)物理的に王国の死活問題
と、様々な要因が絡みつき、シドゥータ王の代替わりの際は必ず、密かに荒れるのである
わかりやすく言えば、今までずっと表舞台に姿を現さなかったポッと出の王族が即位。大して情報が無く、暗君か賢君かもわからぬまま、長く緊張が続いている、新たな王の即位という事で気が緩んでいると睨んだ北の帝国に注意を払いピリピリする文官軍人&重役。新人である王にあれこれ教えながら様々な問題を処理。しかも此度の新王は成人どころか24の男で、聞けば身分を隠し今まで他国を遊び歩いてきた男らしい。なんと、放蕩男か‥‥と知らぬ間に評価が大暴落。その計りの視線を受けながら、対応を見られる執務の時間。そして段々と平和ボケしてきた王国内の貴族たちのいさかいの多さ
一言で言えば、初っ端から問題が山積み。むしろ、新王が即位することで自主的に次々と問題が積みあがっていく、否積み上げられていくと言うべきか
「ああ゛あ゛ーーッ!!」
新王セウリス・ガキア・シドゥータ(24)は重厚な文机にバンッッと勢いよく頭を打ち付けた
その突然の奇行に新たなる王をようやく受け入れ始めてきた文官や重役たちがびくうッと身を強張らせるが、幼いころからの世話役であり、他国を回る旅にも同行した生っ粋の側近たちは慣れた様にやれやれと肩をすくめるだけ
正しくシドゥータの現在はカオスである