愛おしき者
「ここの料理って、そんなに美味しいの~?」

そう言うと、男は食事に集中している私の取り皿から、先ほどよそったばかりのエビチリを1つつまみ、自分の口に放り込んだ

私は、モグモグと口を動かす男の顔を見つめ…

「それ…私の…しかも手掴みで…っていうか、なんでそこに座ってるのよ」

男は、口の中の物を飲み込み…

「結構イケるね…これ…」

と、相変わらず笑みを浮かべたまま、答えた

「さっき、ここいい?って聞いたんだけどな…聞いてなかった?」

と、わざとらしくため息をついた

「食べるなら、自分の取り皿に取って食べなさいよ…それに、そこに座っていいなんて、言った覚えはないわ」

私は、さっきまで使っていた取り皿をテーブルの隅に置き、新しい取り皿に新たに料理をよそう

「別にいいでしょ?料理だって、ちゃんと手拭いてたし…それに、まだあるでしょ?」

と言って、指に付いたエビチリのタレを舐めた…

「それより…お話しようよ…僕、もっと君の事知りたいな」

と、ニコニコと微笑む…

「私に狙いを定めたなら、無理よ…私、ここに男を探しにきたわけじゃないから…私は、ただの頭数…狙うなら、ほかの娘にしたら?」

私の言葉に、男は目を見開くと、またニコニコと微笑みながら答える…

「君、面白いね~。僕そういう、がっついてない娘好きだな~」

と、料理を取っていた、私の取り皿を取りテーブルに置いた…
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