愛おしき者
私が叫んでも、誰も部屋から出てくる様子はない…

しばらく、そんなことをしていると…

「お姉ちゃ~ん…やっと着いた…」

と、どこからか声が聞こえた…

男は、その声に動きを止めて、声の方を見ているようだ…

私も、声の方を見てみると…

「お姉ちゃん…何してるの?」

そこには、見たことのない少年が、大きな荷物を肩から下げて、こちらを見ていた…

(誰…?この子…)

私が固まって、その少年を凝視いると…

「もしかして…彼氏?…でも、ごめんね」

そう少年はニコッと微笑み、男の腕を掴みながら…

「僕、今日は疲れたから早く休みたいんだ…だから、今日は帰ってもらえます?」

そう言うと、私の肩に手を置き、私を促しながら階段を上り始めた…

そして後ろを振り向き、未だ佇んだままの男に…

「ごめんね…彼氏さん」

そう声をかけ、再び私を促しながら、階段を上りきった…
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