愛おしき者
「ごめんなさい…」

私は、ハッとして答える…

少年は、私の肩から手を離すと、フッと笑い…

「いいえ…」

と、言って微笑んだ

「本当に、ごめんなさい…それと…さっきは、ありがとう…」

私が、慌てて立ち上がり頭を下げると、少年は一瞬目を見開き、立ち上がった…そして…

「どういたしまして」

と、ふたたび微笑む…

私は、その微笑みにまた吸い込まれてしまった…

(本当に、不思議な子…なんだか、懐かしい感じ…)

また呆けている私に…

「あの…」

と、少年はおずおずと首を傾げながら、声をかけてくる…

「ごめんなさい!どうぞ、お茶でも飲んで行って…すぐに用意するから!」

私は、慌てて靴を脱いで部屋に上がり、スイッチを探して電気をつけ、台所でお湯を沸かし始めた

すると、少年は台所に顔を覗かせ…

「お構いなく…それに…女性一人の部屋に、上がり込む訳には…」

少年は、そう言うと顔を逸らし、モジモジとしている…

「もしかして…緊張してるの?」

私がそう言うと、少年がパッとこちらに向けた顔は…

ほんのり、赤くなっていた…
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