オレンジジュースを飲む頃


「あの時の返事、未だに俺貰ってないけど」


そう言ってオレンジジュースを飲み干すと、ゆっくりとベンチから立ち上がり、茫然としている私を見下ろす。

屋根付きだから直射日光は浴びないが、それでも彼の表情はよく見えている。

これから彼の口から出る言葉が怖かった。

もう後戻り、出来ないのだろうか。




「やっぱ俺、ゆいが好きなんだけど」



梅雨明けして本格的に始まった夏。

オレンジジュースがより美味しく感じ始めるこの季節、何かが変わり始めるように。

まるで、止まっていた古時計の針が再び動き始めたように。


無言の私達の間には、風で揺れる風鈴の音だけが鳴っていた。



 
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